技能実習生の採用から退職まで

高知インターナショナルビジネス株式会社の宮尾です。

技能実習生の採用から退職までについてまとめてみました。

団体管理型であっても企業単独型であっても、技能実習内容や、技能実習生に適用される法律は同一です。

どちらか一方の形態が技能実習生や実習実施機関によって有利ということはありませんが、海外子会社等の従業員以外の外国人を技能実習生として連れてくる場合は、企業単独型を選択することはできません。

~自社の子会社の社員を受け入れる場合~

「企業単独型」で自社の子会社等の従業員を受け入れる場合には、技能実習として受け入れなくても「企業内転勤」で受け入れることも可能です。

非熟練労働者を外国から日本に呼び寄せて働いてもらう(子会社従業員に日本で技術を習得させる)場合、「技能実習」と「企業内転勤」のどちらの在留資格が適切かという問題ですが、

●滞在期間の実施内容の大半が研修である場合は技能実習

●最初だけ研修を受けて、あとは企業内転勤の在留資格に沿った行動をする場合は企業内転勤

ということなので、研修期間をどれだけ設けるかにより適切な在留資格は変化します。

外国人を自社の労働者として受け入れる場合の在留資格としては「技術・人文知識・国際業務」もありますが、この在留資格の場合、原則として大卒以上の学歴が必要になります。

技能実習生は第1号、第2号、第3号に分かれています。

第1号1年間滞在可能
第2号2年間滞在可能(第1号終了前に試験を受けて合格すること。)
第3号2年間滞在可能(第2号の終了前に試験を受けて合格すること。)

※なお、第1号から第2号への試験は、不合格でも一度だけ再試験が可能です。

〇第2号から第3号への移行に関すること

  • 移行条件は、「実習生が技能検定3級等の試験に合格していること」、「管理団体及び実施者が優良認定されていること」。
  • 技能実習計画の認定基準により、第2号技能実習終了後、第3号の活動を開始する前に実習生は母国へ一か月以上一年未満の一時帰国をすることが定められています。(令和元年よりこの認定基準は改正され、技能実習開始前のほか、技能実習開始後1年以内に、同期間内の一時帰国も認められています。)

〇技能実習3号へ移行できない職種・作業

職種作業
漁船漁業(漁業関係)棒受網漁業
農産物漬物製造業(食品製造関係)農産物漬物製造
医療・福祉施設給食製造(食品製造関係)医療・福祉施設給食製造
カーペット製造(繊維・衣服関係)織絨毯製造
タフテッドカーペット製造
ニードルパンチカーペット製造
印刷(メディア関係)グラビア印刷
リネンサプライ(テキスタイルレンタル等)リネンサプライ仕上げ
宿泊(宿泊関係)接客・衛生管理
ゴム製品製造(製造関係)成型加工
押し出し加工
複合積層加工
空港グランドハンドリング(空港関係)客室清掃

技能実習生として受け入れが可能か否かの判断は、受け入れ可能な職種に該当されると思われる場合であっても、技能実習生に実施させる作業内容が各作業内容で定められている「審査基準」に該当するか否かで決まります

☆具体的な確認方法は下記のとおりです。

1,JITCOに連絡し確認する

2,厚生労働省のウェブサイトを通じて確認する(技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験基準のページです。)このうち、必須作業が全体の業務内容の五割以上であることが、技能実習の認可が下りるための条件の一つとなります。

技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験基準はこちらのリンクから見られます↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/002.html

~技能実習生を最長5年間受け入れられる「優良基準適合者」とは~

実習実施者である企業、管理団体がいくつかの観点において審査され、満点(120点)の6割以上に達していた場合、優良な実習実施者の基準に適合する「優良基準適合者」となり、技能実習生を5年間受け入れることが可能になる認定のことです。

「優良基準適合者」は2017年11月に施工された新たな技能実習法によってできた仕組みで、認定を受けた実習実施機関は受け入れ人数枠の拡大や実習期間が延長できるなどの利点があります。

〇審査基準は下記のとおりです。

①技能等の修得に係る実績(最大70点)

【審査項目】

  • 過去3年間の基礎級程度の技能検定等の学科試験の合格率
  • 過去3年間の2・3級程度の技能検定等の実技試験の合格率
  • 直近過去3年間の2・3級程度の技能検定等の実技試験・学科試験の合格実績
  • 技能検定等の実施への協力

②技能実習を行わせる体制(最大10点)

【審査項目】

  • 直近過去3年以内の技能実習指導員の講習受講歴
  • 直近過去3年以内の生活指導員の講習受講歴

③技能実習生の待遇(最大10点)

【審査項目】

  • 第1号技能実習生の賃金のうち最低のものと最低賃金の比較
  • 技能実習生の賃金に係る技能実習の各段階ごとの昇給率

④法令違反・問題の発生状況(最大5点)

【審査項目】

  • 直近過去3年以内に改善命令を受けたことがあること
  • 直近過去3年以内における失踪がゼロ又は失踪の割合が低いこと
  • 直近過去3年以内に責めによるべき失踪があること

⑤相談・支援体制(最大15点)

【審査項目】

  • 母国語相談・支援の実施方法・手順を定めたマニュアル等を策定し、関係職員に周知していること
  • 受け入れた技能実習生について、全ての母国語で相談できる相談員を確保していること
  • 直近過去3年以内に、技能実習の継続が困難となった技能実習生に引き続き技能実習を行う機会を与えるために、当該実習生の受け入れを行ったこと

⑥地域社会との共生(最大10点)

【審査項目】

  • 受け入れた実習生に対し、日本語の学習の支援を行っていること
  • 地域社会との交流を行う機会をアレンジしていること
  • 日本の文化を学ぶ機会をアレンジしていること

〇技能実習生の賃金レベルについて

技能実習生には、最低賃金以上の給与を保証しなければなりません。技能実習生だからと言って、技能が同程度の日本人よりも不当に安い賃金で雇用することはできません。

法令順守している企業においては、技能実習生も日本人労働者と同じ給与を保証し、社会保険料の負担もあるほか外国人技能実習受け入れに際しては生活面でのサポートなど様々なコストがかかるため、技能実習生の手助けをする社員の人件費まで含めると、総額としては日本人労働者より割高になる場合もあります。

~団体管理型で受け入れた場合に必要となる費用~

1年目2年目3年目
管理費用概算870千円493千円578千円
賃金等概算1,942千円2,114千円2,114千円
受入総費用概算2,812千円2,607千円2,692千円

※「受入総費用概算」は、管理費用概算と賃金等概算を足した額です。

〇帰国時、退職時の処理について

帰国時、退職時に技能実習生が行う手続き

●出国時に必要な物をそろえる・・・チケット、パスポート、在留カード

●銀行口座の解約・・・最終給与支給後、銀行口座を解約すること。

●市町村への転出手続き・・・住民登録をした市町村に帰国前に転出届を行う。

●携帯電話及びインターネット等の個人で行った各種契約の解除

●宿舎の掃除・・・寮退去に伴う掃除及びごみ捨てなど

企業側が行う手続き

●帰国航空券の手配

●有給休暇の消化・・・実習実施期間中に消化するよう付与を推奨すること。

●最終給与の計算・・・最終給与は帰国の都合上、あらかじめスケジュール立てて給与計算を行う必要がある。

●市町村への転出届の付き添い・・・技能実習生本人が行うが、市町村まで付き添って手続きするのが一般的。

●技能実習生が行う手続きの確認・・・技能実習生が行う手続きが確実に実行されているかを確認する。

●健康保険証・社員証の回収、社会保険喪失手続き・・・社会保険の喪失手続きと健康保険証の返却漏れがないように注意する。年金手帳は脱退一時金の申請で使用する。

●宿舎の点検・・・退去時のごみ捨て状況のチェック

●空港までの技能実習生の送り・・・宿舎から空港まで送り届ける。

●ハローワークに届けを出す・・・帰国してから10日以内に行う。

管理団体が行う手続き

●技能実習生本人に渡すもの・・・「厚生年金脱退一時金」の母国での申請手続き方法(厚生年金脱退一時金とは、日本国籍を有しない人が国民年金、厚生年金の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができるというものです。)

●送出機関への連絡・・・帰国の知らせ及び空港出迎えの手配を依頼する。

●空港での見送り・・・出国の確認を行い、母国で迎えに来る送出機関に連絡する。

●出入国在留管理庁に報告・・・技能実習生帰国後に行う。

技能実習生が退職時に会社がとるべき手続きについて

①退職証明書

②雇用保険被保険者資格喪失届

③中長期在留届の受け入れに関する届け出

④厚生年金・国民年金の脱退一時金についての説明

⑤住民税の取り扱いなど

なお、通常の退職手続きに加えて技能実習生が実施すべき事項は下記のとおりです。

この手続きをしていないと、在留資格に影響が生じる可能性があります。

●(退職に伴い日本を離れる場合)脱退一時金を請求

●住民税の納付

〇「脱退一時金制度」・・・厚生年金、国民年金の保険料を6か月以上納入した方が対象となります。

これは、納入してきた保険料が掛け捨てとならないための措置です。2017年8月以降、受給資格期間が10年に短縮されたため、受給資格期間が10年以上ある方は将来日本の老齢年金として受け取ることができます。よって、脱退一時金は受け取れません。

働いた国と母国の二国間で社会保険をかけ、二重負担になることを防止するために締結された「社会保障協定」が採用されている国では、納付期間と年金支給を本国の年金制度と合算することができます。

【社会保障提供国一覧】

ドイツフランススペインインドネシア
イギリスカナダアイルランドルクセンブルグ
韓国オーストラリアブラジルフィリピン
アメリカオランダスイススロバキア
ベルギーチェコスロバキアハンガリー中国

〇「住民税の納付」・・・支払うべき住民税を納付していない場合は、在留期間の更新申請等が許可されない場合があります。

~母国に戻る技能実習生の住民税の取り扱いについて~

実習期間を終えた技能実習生は母国に帰ることになります。

本来住民税は本人が支払うべきものなので、出国に際して給与天引きや一括納付を行うことになります。しかしながら、中には「会社が本人の住民税を負担する」ケースもあります。

退職時の給与にて残りの住民税を会社側で一括徴収し納付する場合

外国人社員の最後の給与等で会社側で一括徴収することが可能です。

納税漏れを起こさないためにもこの方法が一番安心です。

普通徴収に切り替え、本人が納付する場合

退職時の給与等では住民税が払いきれないなど一括徴収ができない場合は、普通徴収になります。

「退職に伴う異動届出書」が提出され、住民税は特別徴収から普通徴収に切り替わっているので、仮に本人が支払わなくても会社に責任は及びません。

※納付漏れを防ぐために会社が本人の納税管理人になった場合には、本人の未納に関して会社に責任が生じることになります。

本人の住民税を会社が負担する場合

「住民税の負担額は大きいため、外国人社員からクレームが生じることもある」などの理由から、本来個人が払うべき住民税を会社が肩代わりして払っているケースも見られます。

この住民税は「外国人社員が日本勤務をしたことに伴い発生したもの」ですから、会社がこの住民税相当額を本人に代わって支払った場合、所得税法上、「国内源泉所得」に該当します。

〇非居住者(住民税を支払う義務がない方)の定義

滞在期間が183日以内である場合や、雇用主が非居住者である場合、また、雇用主が給与などを費用処理していない方が該当します。

こういった事情で働いている外国人社員の方は、いわゆる「短期滞在者」の分類に入るわけなので、183日ルール(短期滞在者免税)が適用されています。

また、当該外国人社員が日本を出国した翌日から非居住者に該当するので、非居住者になった以後に当該住民税を会社が負担した場合は、当該住民税相当額について20.42%の税率で所得税の源泉徴収が必要です。

もしくは、出国前に支払うべき住民税を計算し、外国人社員が受け取る最終月の給与にグロスアップして支給する形をとり、そこから住民税を特別徴収したり、住民税相当額を預かり、納税管理人として会社が納付する方法もあります。

※グロスアップとは・・・海外出向者の給与計算方法のこと。

日本に留学している外国人を採用する場合、彼らの大半は日本語が流暢で、かつ大学生活やアルバイトなどを通じて、日本の生活様式にある程度慣れ親しんでいます。

一方、技能実習生として日本に来るのは、日本語も流暢でないうえ、外国で働いたこともないような外国人がほとんどです。そのため、会社側が彼らの「保護者」になるつもりで生活全般の面倒まで見る必要があります。

ご不明な点等ございましたら当社までご連絡ください。

お問い合わせ – KIB (kib-japan.com)

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